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第3回 ボルダリングジャパンカップ


大会会場

大会会場(撮影:小池徳久)


決勝第4課題の渡辺数馬

決勝第4課題の渡辺数馬(撮影:小池徳久)


決勝第3課題の野口啓代

決勝第3課題の野口啓代(撮影:北山真)


藤井昭子

5位入賞の藤井昭子(撮影:北山真)


小田桃花

女子2位は“ニュージェネレーション”
小田桃花(撮影:北山真)


※ 写真はクリックで拡大画像が表示されます。

大分県 竹田市 県立竹田高等学校
大分国体ボルダリング競技場

'07年12月1〜2日

リザルト(PDF)

 第3回を迎えたボルダリング・ジャパンカップは、来年の国体会場となる大分県竹田市 県立竹田高等学校内に設置された仮設競技場での開催となった。国体は来年からこれまでの縦走競技が廃止となり、それに替わってボルダリングが入る。そのための競技場だが、会場となる修道館(小体育館)はやや手狭なものの、壁は――写真を見ればおわかりいただけると思うが――申し分のないものとなっている。この壁が国体後も常設で残れば……と思うが、残念ながらここにこのままの形では残らないとのことで、残念だ。

 さて、ある意味で大波乱のあった昨年とは異なり、今回は課題にしてもトータルな運営にしても順調に(無論その蔭 には、地元の方々の苦労があったわけだが)終わることができたと言えるだろう。男子予選の全一撃が多かったことに慌てたセッター陣が、準決勝を少々締めすぎたのは確かだが、カウントバックしない準決勝だけでの成績を見ると、上位から下位までそれなりにばらけている。これは、充分許容範囲と考えて良い。

 一つ一つのルートが短いだけに、ボルダーはリード以上に課題/ルートの適切な設定が要求される。そして課題のグレードと同時に――あるいはそれ以上に、ボーナスの設定が大きな鍵を握ることをあらためて確認した。セッターも相当に気を遣うところとは思うが、この設定1つで順位が大きく変わってくる。'06年、'07年それぞれの第1戦を例に見てみよう。前者はT-Wall東村山での大会だが、この大会の予選の課題の中には、ボーナスのアテンプトと完登のアテンプトが同じ選手が多い、と言う課題があった。つまりボーナスまで行ければ、完登は楽勝と言うことである。結果的には課題数の多さでカバーされて順位はそれなりにばらけているが、もしボーナスでも差がつくように設定されていれば、予選落ちした選手の中の同着をさらに減らすことができただろう。後者は船橋ロッキーの大会のある課題。こちらは、ボーナスに全員が最初のアテンプトで到達したが、その次の一手を保持した選手は少なかった。そのためボーナスでは順位がつけられなかったのだが、もし1つ先のホールドがボーナスだったらよりすっきりした順位になったろう。まあ結果論には違いないが。

 ボルダーの採点システムとしては、国内では船橋ロッキーの大会で採用されているアメリカ方式(センドフェスト方式)もある。こちらはリードの評価に近い考え方を付加して、トップに近いホールドにより高いポイントを付け、保持した最高ホールドのポイントを合計すると言う方式である。これにはボーナスの設定に気を遣う必要がなく、より細かな評価が可能であるという意味でメリットがある。しかしホールド数やグレードが異なる課題間の整合性など、課題も残る。

 来年からの国体競技では、総競技時間の関係などで課題数が限られる中でより確実に順位を分けるために、ボーナスポイントを二つ設定することが考えられている。今回はそれも念頭に置いて見ていたのだが、いくつかの課題で「ここにもう一つボーナスをつければ、さらに順位を分けられる」と思われるポイントがあった。実際の大会を経なければ断言はできないが、国体については複数のボーナスというのは有効だろうという確かな感触を得られたと思う。

 さてリザルトを見てみよう。男子は上位入賞の常連ながら、大きな大会で表彰台の中央に立つことは少なかった渡辺数馬が、予選6位、準決勝4位から一気に逆転して優勝をもぎ取った。決勝での気迫はまさに“スーパー数馬”。2位はこちらも実力はありながら、メジャー大会では表彰台を逸していた杉田雅俊。余勢をかったと言うことでもないだろうが、この大会直後に、備中の“空知”(5.14d)の第4登に成功し、絶好調である。そして3位は昨年の覇者 村岡達哉であった。一方女子は、今年も野口啓代が優勝。国内第一人者の位置はゆるがない。そして2位は小田桃花。女子はボルダーでも10代前半が台頭した形である。3位は、尾川智子。

 冒頭に書いたように、来年度からは国体でボルダーが始まる。施設の問題、指導者の問題など、課題が山積しているのは事実だ。このボルダー導入が縦走競技と“引き替え”と言うこともあり、地方では反発も少なくない。確かに、初めてのものに一から取り組むのは、地方の協会/連盟にとって大きな負担を強いることに違いない。しばらくは、どこでも模索が続くだろう。その模索期を乗り切って、このボルダーの導入が地方へのクライミング競技の浸透につながることを望みたい。

(山本 和幸:日山協クライミング常任委員)

優勝は渡辺数馬と野口啓代

優勝はこの二人(撮影:小池徳久)



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