富山県 南砺市
桜ケ池クライミングセンター
'05年8月19〜21日
この大会は、毎年180名前後の参加者が全国から集まる国内最大のユース大会である。第4回大会以来、この富山県南砺市(旧 城端町が周辺自治体と合併)での開催が事実上定着してきた。地元が開催に対して積極的であることはもちろんだが、参加者数、スタッフの動員、宿泊施設などを総合して、これだけの参加者を受け入れる能力のある会場が他に見あたらないことも事実であった。
そして本年度、この大会は総務、文部科学両省の「スポーツ拠点づくり事業」として認められ、最大10年間にわたり開催経費の助成が受けられることとなった。これにより少なくとも10年間は、この地での開催が決定/保証されたわけである。
また助成は施設整備に対するものも含まれ、これにより従来は垂壁だった左右側面の壁が、最大傾斜約120度のオーバーハングとなり、今年から4面を使用した競技運営が可能となった。雨対策では若干の不安は残るものの(今年の大会でその不安が証明されたわけだが)、施設規模としては申し分のないものとなっている。
今年の参加者は男子119名、女子53名、計172名。そして今年は、ICCの国際競技会での年齢別クラスで最年少になるユースB(開催年の14〜15年前に生まれた者)に満たない参加者が、かなり多数に登った。この大会では年齢の下限を設けていないため、従来からこの年代の参加はあったが、ユースBに一括して扱ってきた。だが今年は男女混合であれば、1カテゴリとして扱いうる人数が集まったため(募集時で28名)“アンダー・ユースB”と言うカテゴリを急遽立ち上げることになった。ただ、何人かの選手については競技歴も多く、ユースB以上の選手と同じ基準で判断してシード扱いとなるため、これはユースBの中で競技することとした。
初日は男子予選。シード17名を除く88名が、2ルートに分かれて熱戦を繰り広げた。例年この大会は季節柄、選手にとってもスタッフにとっても暑さとの戦いになる。今日も大会スタートの段階では照りつける日差しの中での文字通りの「熱戦」。午後はにわか雨となり一時は大会続行が危ぶまれるほどであったが終了時には雨もやみ、気温が下がった分後半の選手は幸運だったといえそうだ。
さて結果だが、各ルートから上位59名が準々決勝に進出した。
2日目はまず、女子準々決勝(41名)とアンダーユースB(男子14名、女子12名)予選。アンダーユースBは今年、急遽設けられたクラスでユースB(1990〜91年生まれ)より下の年代を集めたもの。従来もこの年代はユースBとして参加可能だったが、今年はかなりの人数が集まったため独立したクラスとすることになった。
女子、アンダーユースBの終了後は男子準々決勝。昨日の予選通過者にシード選手17名を加えた76名が2ルートに分かれて競技をおこなった。
今年は、天気が今ひとつ不安定で、初日、二日目とも午後になると必ず通り雨に見舞われる。幸い競技の進行への影響はなかったものの不安が残るため、時間短縮のため開始時刻を繰り上げ、さらに男女準決勝とアンダーユースB決勝が同時進行となった。幸い、競技中は雨は降らず、最後の表彰式のみ雨の吹き込むステージ上での実施となったが、幸運と言えるだろう。
総合優勝でJOCのクリスタルカップを手にしたのは男子が安間佐千(ユースA)、女子は梶山沙亜里(ユースB)。アンダーユースBの優勝は男子が地元 南砺市の橋場友祐、女子が山口県の小田 桃花だった。
今回の大会の収穫としては、アンダー・ユースBと言うカテゴリを新設できるだけの若い選手が集まったことが挙げられるだろう。国際大会ではこの年代の大会は行われてはいないが、ユースBに確実な競技力を持つ選手を送り込むためには、ユースB未満の選手の発掘/育成は必要である。その意味でこの年代の選手の層が、着実に増えかつ成長していることは心強い。同時に、このカテゴリの優勝が地元の選手であったと言うことも喜ばしい。この大会の運営に非常に積極的に応援していただいている中で、地元の選手の活躍がないのは寂しいものである。今後、地元からより多くの優秀な選手が続くことを期待したい。
大会ごとに言われることではあるが、全体的にユースのレベルは年々向上している。毎年新たに有望な選手が登場し、層は着実に厚くなっている。この状況を考えると、ヨーロッパ、そしてお隣の韓国に比べても遅れている組織的な選手へのサポート体制の整備は急務といえるだろう。
(山本 和幸:日山協クライミング常任委員)
撮影:篠崎 喜信、山本 和幸