* 昨年秋にジャパンカップの会場となった湯原クライミングセンターだが、半年置いて続けざまに日本選手権が開催された。“国内2大メジャー大会”が、連続して同じ会場で開かれるのは珍しい。国体から数えれば3年連続で全国大会の開催である。
* 同じ国体施設である富山県南砺市(旧城端町)も大会誘致には積極的だが、県ではなく市町村として施設を作った自治体は大会開催に熱心だ。こうした大会の誘致には、自治体としても施設の有効活用、そして観光客誘致につながる知名度向上というメリットがあるのかとは思うが、全国的に自治体の財政が厳しいといわれる中で予算を確保して開催していただけるというのは、競技会を開催する方としては大変ありがたく感謝に耐えない。
* 今回は、ゴールデンウィークの頭という微妙な日程。これは場所が岡山だけに、その後ついでに備中に回れば・・・・・・という読みのもとでの設定。しかしふたを開けてみると、締め切り1週間前までなかなか参加者数が伸びず、こんな参加者数では地元に申し訳ない、とやきもきさせられた。最終的には最後の数日で一気に申し込みが集中し、男子が58名、女子が29名という規模の大会になった。選手の顔ぶれは、やはり数少ない西日本での開催ということで、普段は参加者の少ない中国、四国地方からの参加者が多い。同時に地元開催国体に向けて若年層の育成が進む山口県を中心に、中国地方のユース世代が多く参加したことも特徴だ。
* 一部有力選手がワールドカップなどの国際大会との兼ね合いで欠場。男子はそれでも安間佐千ら若手を中心にトップクラスが集まった。一方女子は昨年の覇者 真達朋子、そして小林由佳、野口啓代、尾川智子も欠場。逆に言えば、誰が優勝するか予想のつかないわけで、選手にとっては「ねらい目」と言える大会となった。同時にこの大会の成績は、秋に埼玉県加須市で開催される国内では15年ぶり3回目のワールドカップの選手選考に大きな影響を持つ。選手としてもがんばりどころの大会である。
* そして、そうした大きな意味を持つ大会だからと言うことではないだろうが、ルートの内容は特に男子ではやや厳しいものだったようだ。予選段階で完登がわずか3名。準決勝は完登無しでこの段階で順位がきれいにばらけていた。これまでの大会の“常識”からすれば、予選は完登通過、あるいはそれに近い状況だったわけで、それからすると難しめの設定だったことは確かだ。予選が準決勝、準決勝が決勝のレベルだったのだろう。ただ準決勝はもともと、「全体を通したグレードは決勝と同レベルで下部が若干易しめが理想」なのでこれはこれで良いのだろう。最近のワールドカップでは準決勝で順位をつけて、決勝は“完登ショー”と言う傾向があるようだ。だがそれでは、選手にとっては決勝での逆転がありえず、問題が多い。今回の決勝は安間佐千が一人完登で、理想的な結果であり、ラウンド構成だったわけである。
* 男子のリザルトは、松島暁人、茂垣敬太と言った中堅(すでにベテランか?)を欠いた分、若手が上位に食い込んでいる。ファイナリスト8名の内5名がユース、さらに2名も今年でユースを卒業したばかり。コンペの中核が若手にシフトする傾向が、いよいよ明確になってきたようだ。女子はそれに比べベテランの健闘が目立つ。とは言うものの優勝は小学生の尾上彩。メジャー大会の最年少優勝記録の更新である。以前の記録は、小林由佳の2001年サンシャインシティーでの優勝ではないかと思う。だが、この大会には、当時のトップであった加藤(現 南裏)保恵、木村理恵らが出場しており、それを破っての優勝だった。現時点の国内トップの多くを欠く今回とは条件が異なる。今回の尾上の優勝は快挙ではあるが、2001年の小林の優勝と同じように評価できるかどうかは、今後の尾上の成長にかかっていると言えるだろう。
(Judge)